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【音也】
もし、立場が逆だったとしても、
俺のパートナーは君しかいないから。
それだけは、覚えといて。
【春歌】
あ、は、はいっ!
わたしのパートナーも一十木くんだけですっ!
【音也】
うん。
あのさ、手、繋いで帰ろうっ!
【春歌】
あっ!

一十木くんが強引にわたしの手をとって
歩き出した。

外に出ると、雪がしんしんと降っていた。
わたし達は肩を寄せ合い、
大きめの一本の傘を共有した。

【春歌】
あ……雪になったんですね。
今朝はみぞれだったのに……。
ふふっ。なんか嬉しいな。
【真斗】
歌いだしたいくらいに……か?
【春歌】
そうですね。雪を歌うのは好きです。
こんな風にみぞれから変わった時は特に。
【真斗】
お前は覚えていないかもしれないが、
俺達は一度、こんな雪の日に会っているんだ。

聖川様が手をぎゅっと強く握った。

【那月】
あれ? ……ハルちゃん……。
【春歌】
那月くんっ!

那月くんが、那月くんが目を覚ました!
良かった。本当に嬉しくて、
涙で、視界がかすむ。

【那月】
ぎゅってしたい……。
【春歌】
え……でも……。

那月くんはひどく衰弱しているようで、
起き上がれそうになかった。

【那月】
ここに……きて……。
僕の手の届くところに……。
【トキヤ】
もしかすると、しばらく……。
いえ、二度と芸能界に戻って
こられなくなるかもしれない。
【春歌】
一ノ瀬さんなら大丈夫です。
HAYATO様を通じてわたしたちに
見せてくれた時間は無駄じゃないから。
【春歌】
あなたの実力は本物だから、
絶対に世間が放っておくはずがないです。
【トキヤ】
応援ありがとうございます。
私はやっと、HAYATOという
呪縛から解放された。

そう言って、微笑む一ノ瀬さんは
とても晴れやかな顔をしていた。

【レン】
この曲データもらっていいかな?
たまには、練習してみるのも悪くない。
【春歌】
あ、はい。
CD‐Rに焼いておきました。
【春歌】
あっ! わたしの曲を歌っていただけるってことは、
賭けはわたしの勝ちってことですよねっ!
【レン】
そうだね。
まぁ、第一関門クリアといったところか?
【春歌】
ステージクリア……ですねっ。
わぁ……嬉しいなぁ。
これから、練習してもらえるんだっ!
【レン】
まったく、君って子は……。
どうしてそう、オレの心の中に勝手に入り込んでくるんだろうね。
【薫】
できないの? だったら……。
ボク認めないよ。
【翔】
できる!
……できるに決まってんだろ
そんなもん。
【春歌】
え…………?

しょ、翔くん……。
何を……。

【翔】
春歌っ!
いいな……。

えと……。
その…………。

は、初めてのキスだけど……。
相手が……翔くんなら……。

ぎゅっ、と。
翔くんがわたしを強く抱きしめる。

【クップル】
にゃあっ。

その時、クップルがひと鳴きして、
わたしの肩に飛び乗り、唇にキスをした。

【春歌】
え…………?

すると、クップルの姿が見る間に変化し、
同じ年頃の男の子になった。

青く澄んだ瞳。
浅黒い肌。
彫りの深い顔立ち。

艶やかな髪。
その人は、アラビアンナイトに出てくる。
王子様のようだった。