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スペシャルショートストーリー『Prince of summer vacation』

一十木くんと沖から泳いで戻ってくると、浜辺には大きなスイカがでんっと置かれていた。

「海といえばやっぱコレだろコレっ!!」
木の棒を片手に翔くんが胸を張る。
「うんうんっ! 楽しいよねスイカ割りっ!! でも、スイカなんてどっから持ってきたの?」
一十木くんがとても楽しげにスイカを見つめた。

「さっきロッジで見つけてさ。夕飯のデザート用だったらしいんだけど、いっぱいあったし、
先生に聞いたら、使っていいって言われたから、一番でかいのを持ってきたんだ!
どうせ割るならデカイ方が楽しいからなっ!」
そう言って、翔くんがぽんぽんっとスイカを叩く。
確かにそのスイカは翔くんの頭よりもずっと大きかった。
持って来るの大変だっただろうなぁ。
翔くんは、見かけはちっちゃくて可愛らしいけど、実は意外と力持ちさんなんです。

「さてと……んじゃ、お前からやってみろよ」
「へ……? わ、わたし?」
スイカ割り……噂には聞いていたけど……。挑戦するのは初めてです。
「ん? もしかしてやったことない?」
「……はい。何となく知ってはいるんですが、やったことは1度も……」
「そっか、んじゃ、特別に俺様がやり方を教えてやる! いいか、まず目隠しをする」
すっと手が伸びてきて、ハチマキで目を覆われた。
「なっ、何も見えませんっ!」
視界を奪われると、急に不安になってくる。
「バーカ、当たり前だろ。目隠ししてんだからさ……。ホントおもしろいやつ」
「この後、くるくるくる~って回すんだよね」
真横から楽しげな一十木くんの声が聞こえる。
「おうっ! んじゃ回すぞっ」
「わっっ!まっ、待って……」
緊張してわたしが身体を強張らせると、翔くんが優しくぽんっと肩に両手を添えてくれる。

「怖くなんかねーよ。ほらっ、肩の力を抜け……なっ!」
「はい。ふぅーーー。……こ、心の準備できました。お願いします!」
ほっとしたところで、肩をつかまれ、くるくる~っと回される。
「きゃっ、目…目が回る……」
翔くんはわたしが転ばないように気をつけながら、ゆっくり回してくれているみたいだった。
でも、やっぱり目は回ります。
「よし、こんなもんだろ。後はこれ持って、俺の指示に合わせて、思いっきり棒を振り下ろせっ!」
「はっ、はいっ!!」
何も見えない中、翔くんと一十木くんの言葉だけを頼りに動く。
「もうちょい右っ」
一十木くんの言葉を聞いて、右に向かうけど……。
「ああ、惜しい左だ、左っ!」
どうやら行き過ぎたみたいです。
今度は、翔くんの言葉を頼りに、ちょっと左へ……。
「そうそう、まっすぐ! いい感じだよっ!」
「よし行けっ! 今だ思いっきり振り下ろせっ!」
「……えいっ!」
ぽすっ。
頑張ってはみたのですが、残念ながら空振りしてしまいました。

「残念だったな。でも、惜しかったぜ。うんっ、初めてにしちゃ上出来だ!」
そう言いながら、翔くんがハチマキを外してくれる。
「んじゃ、次は、俺やるね!!」
翔くんからハチマキを受け取り、一十木くんは自分の目にきゅっとハチマキを巻いた。
「準備OK! 思いっきり回して!」
「おうっ! そ~れそれそれそれ~~」
翔くんが楽しそうに、一十木くんをくるくる回し、
一十木くんも翔くんが回す勢いをかりて、自分からもくるくる回っていた。
「あははっ、目ぇ、ぐるぐるいってる。よ~し、突撃~~っ。とりゃぁぁぁ」
ふらつきながらも、一気に駆け出し、一十木くんが棒を振り下ろした、次の瞬間……。

ひゅんっ!!
棒が一十木くんの手からすっぽ抜けた。

「危ないっ!」
ぶつかるっ!!
そう思い目を閉じたけど……。

ぱしっ!
わたしの目の前に飛んできた棒を、翔くんが片手でキャッチする。
「ふぅ……。大丈夫だったか?」
「う…うん。大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
棒が飛んできたのも驚いたけど、それ以上に、翔くんの素早さに驚いた。

棒が飛んできた瞬間、翔くんはわたしの肩を抱いて引き寄せ、前に立ちふさがって、左手で棒をキャッチした。
とっさのときの凛々しい横顔と、ほっとしてわたしに優しく問いかける表情が全然違っていて、
あぁ、男の子っていろんな顔を持っているんだなぁって思った。
「あの……。助けてくれてありがとう」
わたしがお礼を言うと、肩を抱いていた手をパッと離して、ほっぺたを真っ赤にしながら、横を向く。

「別に……こんなのたいしたことじゃねーし……。お前が無事なら、俺は、それで……」
「ああっ! ごめんふたりともっ。大丈夫? 怪我してない?」
ハチマキを外し、一十木くんが駆け寄ってきた。
「大丈夫じゃねーよ、ったく。あやうくぶつかりそうだったんだぜ。気をつけろよな」
「ごめん……」
翔くんに怒られて、一十木くんがしゅ~んと肩を落とした。

「さてと、最後は俺様だなっ! みてろよっ! ぜってぇー割ってやらぁ!!」
そうして、翔くんは意気揚々とスイカに向かい……。
「もう少し右ですっ!」
「ん? ここか?」
「はい!」
「よっしゃっ! おりゃ~~っ!!!」
パカっと、スイカが綺麗に真っ二つに割れた。

「わぁ、すごいですっ!!」
「どんなもんよ!」
ハチマキを取り、翔くんがわたし達に向けて、Vサインをする。
それからすぐ、綺麗に割れたスイカを、翔くんがナイフを使って、適当な大きさに切っていく。
「ほら、食えよ。ここが一番美味いんだぜ!」
にこっと笑い、翔くんがスイカをくれました。

そうしてみんなでスイカを食べていると。
遠くから、ドドドドドドドドドと猛烈な勢いで、砂煙を上げながら何かが近づいてきました。
「翔ちゃぁぁぁ~~~~~~~んっ!」
「げっ! 那月っ!?」
どうやら砂煙の正体は四ノ宮さんのようです。
「悪いっ! 俺もう行くわっ! じゃ、また後でっ!!」
四ノ宮さんの姿を見た途端、翔くんが慌てて立ち上がり、海へ飛び込んだ。

To be continued