聖川真斗「日々精進~聖川手記~」

即興

最近、実習系の授業が多いのだが、
本日の演技の授業は、少々ユニークだった。

架空のボールを投げあい、キャッチボールをしている演技などは
殆ど台詞を使わずとも動作のみで表現でき、
互いの呼吸を合わせることができておもしろかったな。

どうやらこのキャッチボール演技は、
アドリブ力をつけるのに効果的らしい。
確かに、このキャッチボールには筋書きなどなく、
相手の反応を見てこちらもその場で動くからな。
いい訓練になるだろう。

演劇には子供の頃から興味があり、
演技は好きなのだが……。
俺はどうもアドリブは苦手でな……。

台詞の意味を解釈し、行間を読み、
登場人物の心情を汲み取ることはできるのだが……。

その場で台詞を考え出すというのは難しいものだ。

四ノ宮と逆だな。
俺は言うべき言葉さえ決まっていれば
間を読んで台詞を言うことはできるのだが……。
的確な言葉を瞬時に選び出すまでに時間がかかるのだ。

しかし、苦手だからといって避けて通るわけにはいかん。
なんとか、次の実習までに上手くなっておかなければ。

好敵手

同室のライバルというと神宮寺のことだな。
ただでさえ、家同士もライバル関係にあるというのに、
早乙女学園に来てまでライバルとは……。
つくづく因縁深いものだ。

神宮寺はそうだな……。
まず、あの服装からなんとかした方がいいだろう。
本人はファッションと言っているが、
あのように制服を着崩すのはどうかと思う。

あと、むやみやたらに女性を部屋に招きいれようとするのも
風紀を乱すので、できればやめてもらいたいものだ。

寝起きが悪いのもいただけない。
一体、何個目覚まし時計を置けば気が済むのか。

最終的にはすべて自分で止めてしまい、
結局、俺が起こすことになる。
だから早く寝ろといつも言っているのに……。

ひとり部屋ではないのだから
最低限のルールは守ってもらいたいものだ。

春色

徐々に暖かい日も増え、
真冬の寒さが和らいできたように思う。

そろそろコートもいらなくなってくる頃なのかもしれんな。
……とはいえ、まだまだ肌寒い。

そんな折、店で春色の毛糸を見つけた。
この色はこれからの時期映えるだろう。
カーディガンなら使い勝手がいいだろうか……。

先月の礼もせねばと思っていたことだし、ちょうどいい。
今から作り始めるとしよう。

桃の節句

ひなまつりとは女子のすこやかな成長を祈る祭であって
主役はあくまでも女子であり、
我々が馬鹿騒ぎをしていいものではない。

とはいえ……。
一十木の企画したリアルおひなさまとやらは
なかなか興味深かったのでな。
衣装についての相談をされた時、快く引き受けた。

参加していた女子も、とても楽しそうにしていたし、
細部までこだわって、衣装に手を加えた甲斐があったというものだ。

くじ引きの結果、俺は左大臣に決まった。
位が高いのは光栄なことだが……。

左大臣はその……少々年がいっているのでな。
リアルを追求したら仮装のようになってしまった。

白髪の老人……。
あれが数十年後の自分の姿なのかもしれないと思うと、
なにやら複雑な気分になった。

数十年後、俺はどこで何をしているのだろう。
誇れる自分になっているのだろうか。
……そうありたいものだな。

ユニゾン

誰かと声を合わせ、歌う。
それはとても難しいことだ。

例えそれが信頼している友であったとしても、
完璧に相手を把握しているわけではないし、
まして普段から、理論よりも感情で生きている一十木や
感性が違いすぎて、何を考えているのかまったく読めない四ノ宮と
心をひとつにし、声を合わせなければならないのだ。

おそらく並大抵のことではあるまい。

にも関わらず、
あのふたりは、まったくもってその大変さを理解していない。

むしろ状況を楽しんでいるというか、
単純に歌うのが楽しくて仕方がないといった感じだ。

これは、俺がなんとかするしかあるまい。
そう気負っていたのだが……。

四ノ宮は天性のセンスのよさで、ここぞというポイントをおさえてくるし、
一十木は一十木で、生まれ持った勘の良さから
上手く四ノ宮に合わせてくる。

これなら、俺がふたりに合わせさえすれば、何も言わずとも
まとまりのある歌になるだろう。

わかっているようで
本当にあのふたりを理解していなかったのは
俺の方かもしれないな。

歌を通して友の新たな面をみることができるとは……。
どうやら今回の課題は俺にとって得る物が多そうだ。

風邪が流行っているようだ

今朝、教室へ行ったら咳き込んでいるものが数人いた。
マスクをしているものも見かけたな。

歌い手……そして演じ手として、喉は大切にしなければならない。
いざ仕事が入った時、風邪をひいていては迷惑をかけるからな。

手洗いうがいは言うに及ばず、
冬場はマスクをして出かけた方がいいだろう。

俺達はまだプロではないが、今から気をつけておかねば。

そういえば、うがいをする際、
緑茶を使うと良いと聞いたことがあるな。
今度試してみるか。

感謝の気持ち

今日はやたらとじいが張り切っていた。
毎年この時期は、同じことの繰り返しなのでもう慣れたが……。
たまには直接対応したい。

じいの過保護ぶりにも困ったものだ。
今日は休み時間のたびにうちのクラスにやってきて
ずっと俺に張り付いていた。

誰かが俺に話しかけようとするたびに
取次ぎは自分がと言って強引に……。

ああなっては、俺にも止められなくてな。
皆には本当に申し訳ないことをした。

そんな状況にもかかわらず今年は
チョコレートをもらうことができた。
感謝してもし足りないな。

じいの相手は大変だったと思う。
せめて来月は俺から直接礼をしなければ……。

本当にありがとう。

立春

立春とは春の始まり、
そして、旧暦では今がちょうど正月にあたる。

昔の人は春の始まりを1年の初めにしたのだろう。
その気持ちはよくわかる。

確かに1年の始まりは正月からだが、
4月に入学、3月に卒業するからだろうか、
なんとなく1年の始まりは4月のような気がするのだ。

1月や2月は年の初めではあるのだが、
どこか物悲しく、
ああ、もうすぐ終わってしまうという気にさえさせられる。

学生時代は特に1月から3月は短く感じるものだ。

だからこそ、今しかできないことをしておきたいと思う。
友と年中行事に参加するのもそのひとつだ。

しかし、昨日のアレは少々過酷だったな。
あの帽子がよくなかったのだろうか……。
もし、次回があるのであればデザインを変えた方がいいかもしれないな。

毛糸

今日、購買に行ったら
菓子作り用の調理器具や毛糸、それから編み棒などが売っていた。

今まで簡単な裁縫セットなどは売っていたが
よもや購買で毛糸が販売されるとは……。

最近特に冷え込んでいるから編み物を始めるものもいるのだろう。
やはり毛糸をつかった衣服は暖かいからな。

定番はマフラーだが、手袋やセーター、帽子なども奥深いものだ。
ああいった単純作業は心を落ち着けるのに適している。

せっかくなのでひとつ買ってみたのだが
購買の店員に変な顔をされてしまった。
やはりどうせ買うのなら数種類の毛糸を買うべきだったか……。

今度通りかかった時にまだ売っていたら
買ってみるとしよう。

歌詞について……か。
卒業オーディションの曲はその……。
少々、情熱を傾け過ぎている気もするので
このような場で書くのは気恥ずかしいのだが……。

課題ならばしかたあるまい。
腹をくくって綴るとしよう。

歌の歌詞を書くにあたり、
俺はたくさんの詩を読んだ。
それはもう古いものから新しいものまで数え切れないほどに。

人の心をうつ言葉がどのようなものなのか
どういった言葉なら俺のこの想いを伝えることができるのか
それを知りたかったのだ。

詩と詞は別物だが、最初に書かれた時には
音楽がつくと想定されていなかった詩の中でも
後に曲がつくものもある。

それが言葉である以上、
そのものが持つ輝きに違いはないはすだ。

だから、俺は幾億の言葉の中から
俺だけの想いを伝える言葉を選び
連ねていこう。

心の奥に秘めたこの想いを
正しく聴く者の心へ伝えるために……。

心の奥底に降り積もっていった幾千の感情は
理性と言う名の壁に堰き止められ
そして…今溢れようとしている。

この想いを、ただこの歌に託すのみ
今の俺にはそれしかできないのだから……。